京都銀行のフィッシングサイトがヤフーの検索広告に出ていた件

過去にスポンサードサーチの掲載審査に従事していた者として見解を述べておく。

京都銀行

各方面でニュースになっておりますが、明らかになっている事実をまとめると、次のような感じでしょうか。

  • ヤフーの検索連動型広告「スポンサードサーチ」に京都銀行の偽サイトの広告が出ていた
  • 当該広告が掲載されていた期間は「2月11日~2月18日」だった
  • 広告の掲載審査の段階では「問題が検知されなかった」可能性が高い(ヤフー談)

今回なぜフィッシングサイトの広告が掲載されてしまったのか?

具体的な広告テキストやリンク先URLの情報が分かりませんので、あくまで推測ですが、いくつかの可能性が考えられます。

広告が「事後審査」に回り、審査による掲載停止が追いついていなかった?

入稿システムの機械的な判断によって、掲載前の「事前審査」に回らず、そのまま広告の掲載が開始されてしまった可能性。

で、結果的に一週間が経過してしまったと。

目視審査でミスった?

広告がヤフーの掲載審査チームによって目視でチェックされたが、その際に担当者が判断ミスした可能性。

そもそも「フィッシングサイト」の審査基準なんぞ存在しませんから、審査担当者に注意力がない場合、不審に思わず見逃してしまう恐れが。

ただし、掲載審査の熟練者であれば必ず気付くはず。審査基準のマニュアルに載っていない判断ができて初めて一人前ですから。そして、金融系の広告は、それなりに審査経験を積んだ人が担当しているはずです。

掲載審査に通った後で、ウェブサイトのhtmlソースを書き換えた?

今回のフィッシングサイトを仕組んだ輩がリスティング広告の掲載審査をそれなりに「知っている」場合、当初は何の問題もないサイトコンテンツで審査をパスしておき、その後、htmlソースを入れ替えた可能性があります。

これは一番狡猾なパターンやろ。

実際のところはどうだったのか、恐らくヤフー側ではすべて把握しているでしょうから、今後、適宜対策が行われるはずです。

ヤフーからは「金融機関の広告掲載時の審査を強化」するとの公式発言があった模様ですが、個人的には「表示URL」の表記ルールを厳密化するほうがよいのではないかと思います。公式サイトの「詐称」が不可能になれば、検索ユーザー側で不自然な広告に気付く可能性も高まりますし。

ちなみに、検索広告を利用したフィッシングサイトへの誘導ですが、以前にGoogleのアドワーズ広告でも以下のような事例がありました。

これが本当にアドワーズ広告主を狙ったフィッシングサイトだったか否か真相は不明ですが…… 少なくとも、リスティング広告絡みで個人的に目にしたフィッシングっぽい事例は上記のみです。

むしろ、検索広告の悪用事例としては、偽ブランド商品の販売サイトへの誘導の方が多い。

スポンサードサーチの掲載審査を担当していた時分にもいくつかお目に掛かった(そして悉く葬り去った)ことがありますし、最近では次のような例に遭遇しました。

このように、リスティング広告の掲載審査は完璧とは言えない部分もあります。

しかし、全体として見れば、相当数の違反広告や問題アカウントを掲載審査でシャットアウトしているのは事実です。

リスティング広告は、もはや一種の「ライフライン」と化しておりますので、宮坂CEOが「利便性や収益性と安心安全の両立を引き続きベストを尽くしてやっていきます」とツイートされている通り、数々の問題を抱えつつも、引き続き粛々と運用されてゆくのではないでしょうか。医薬品のネット通販とか原発みたいなもんですね。

で、リスティング広告に携わる人は皆、ライフラインを扱う仕事であるという覚悟を持って日々の運用に勤しむ必要があるのではないかとも思うわけですよ。それこそリスティング広告が言葉通りの「生命線」となっている広告主もいるわけですし。

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